【解説】車の減価償却と経費 –– 取得価格や耐用年数など押さえておきたいポイントとは
法人が社用車の購入を検討するときには、車についての税制を知っておく必要があります。
車は減価償却の対象になるため、その考え方や方法を押さえておくと、社用車として購入すべきかリースにすべきかの判断もしやすいですし、車選びにも役立ちます。一括して経費に算入されるかと思っていたのに、減価償却を考えていなかった... と後から悩むこともありません。
今回は、車の減価償却と法人の経費について、取得価格や耐用年数など是非とも知っておきたいポイントを解説します。
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目次
そもそも減価償却とは?
車の税金制度を理解するためには、減価償却の考え方が重要です。
減価償却とは、ある資産について、年々価値が目減りしていくという考え方のこと。たとえば、不動産や車のようなまとまった価値のあるものは、1年では価値がなくなりません。だんだんと価値がなくなっていって、最終的に無価値になる、と考えられます。
当初に物品を購入したときには、物品の取得価格分の価値がありますが、だんだんと価値がマイナスになるので、その分が毎年の減価償却費(経費)になります。そして、その物品の耐用年数を超えると、物品が無価値になる、という考えです。耐用年数とは、その物品が使用に耐えうる年数ということであり(= 価値がなくなるまでの年数のこと)、各種の物品ごとに決められています。
車の場合にも減価償却の考えが適用されるので、取得した価格から毎年減価償却が行われて、耐用年数を過ぎると価値がなくなる、という扱いになります。
まずここで、車の購入費は一括で経費にできないということを押さえておきましょう。
減価償却の方法
それでは、具体的に車の減価償却はどのようにして計算するのでしょうか?そもそも減価償却には、定額法と定率法という2種類の方法があります。
定額法とは
定額法とは、耐用年数の期間中、毎年定額で減価償却していく方法です。たとえば、100万円の物品を5年で定額法で減価償却する場合には、100万円÷5年=20万円ずつ減価償却されていくことになります。
定率法とは
もう1つの減価償却の方法は、定率法です。これは、毎年一定割合ずつ、減価償却していく方法です。
たとえば、100万円の物品を購入した場合、定率法で償却率が50%の場合には、1年目の減価償却費は50万円、2年目はその50%の25万円、3年目はその50%の12.5万円…などとなっていきます。ただ、これだと永遠に終わらなくなってしまうので、ある一定の保証率の価値以下になると、残額が残りの耐用年数で均等に償却されます。
定額法と定率法、どちらが節税になる?
定額法と定率法を比べたとき、定額法の方が計算が簡単で、初期の費用発生も少ないですが、定率法の方が、初期に多くの経費を算入できるので、節税にはつながりやすいです。
車の減価償却
それでは、車の減価償却方法は定額法か定率法か、どちらになるのでしょうか?この点については、所有者が個人事業主か法人かによって、原則的な取扱方法が異なります。
- 個人事業主の場合 : 基本的に定額法を利用
- 法人の場合 : 基本的に定率法を利用
ただ、これらは特に税務署へ届出をしなかった場合の原則なので、異なる方法を使いたい場合には、税務署に届け出ることによって、選択することができます。
たとえば、法人であってもどうしても定額法を利用したければ、車を取得した当初の段階で、税務署に届け出れば良いのです。特段そのような理由がなければ、定率法による方が早めに大きく経費算入できるので、届出をする必要はないでしょう。
車の取得価格に含められるもの
減価償却の基準となってくるのは、取得価格です。車を取得する際には、車両本体の代金以外にも必要な費用がありますが、車の取得価格には、どのような費用が含まれるのでしょうか?
基本的には車両本体費用やオプション費、自動車税や自動車取得税、自賠責保険料などの付随費用が、すべて取得価格に含めることとなります。
取得価格に必ず含めるもの
そして、中でも以下の費用は必ず車の取得価額に含める必要があります。
- 車両本体価格
- オプションの価格(カーナビやETC、カーオーディオなど)
- 納車費用
取得価格に含めなくてよいもの
これらに対し、以下の附随費用については、取得価格に含めないことができます。
- 自動車税
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自賠責保険料
- 自動車の登録費用(業者の代行費用も含まれる)
- 車庫証明にかかる費用(業者の代行費用も含まれる)
- リサイクル料金
上記のうち、リサイクル料金以外は、支払い保険料や租税公課などとして、経費に計上することができます。リサイクル料金は、「預託金」として資産扱いとなり、車の売却か廃車を行うときに経費となります。
車の耐用年数
次に、車の耐用年数が何年になるのか、見てみましょう。事業者の種類と車の種類によって異なります。
一般の事業者のケース
- 普通乗用車の場合には6年
- 軽自動車(総排気量66L以下)の場合には4年
- ダンプ式のトラックなら4年
- ダンプ式以外のトラックなら5年
運送業者などのケース
運送業者やレンタカー会社などのケースでは、自動車を頻繁に利用するので耐用年数が短くなります。
- 普通乗用車の場合に4年
- 軽自動車(総排気量66L以下)の場合には3年
- 積載量2トン以下の貨物自動車や、その他の用途の総排気量2リットル以下の小型車なら3年
- 総排気量3リットル以上の大型車なら5年
中古車で、耐用年数が満了していない車両
さらに、車を中古で取得した場合には、耐用年数までの期間が短くなります。具体的には、法令で定められた次の計算式によって計算します。
■(新車の耐用年数-中古車の耐用年数)+経過年数×0.2
ただし、1年未満の端数は切り捨て、2年未満になる場合には2年を耐用年数とします。
具体例を1つ紹介しましょう。2年落ちの普通車を購入した場合、
(72ヶ月-24ヶ月)+24ヶ月×0.2=52.8ヶ月となりますが、1年未満の端数を切り捨てるので、48ヶ月分の4年が耐用年数となります。
耐用年数が過ぎた中古車両
耐用年数が過ぎている場合には、以下の計算式となります。
■新車の耐用年数の0.2
これについても、1年未満の端数を切り捨て、2年未満なら2年とします。
たとえば、6年を過ぎた普通車を購入した場合には、72ヶ月×0.2=14.4ヶ月となりますが、2年に満たないため、耐用年数は2年となります。
新車と中古車
以上を前提にして、法人が社用車を導入するとき、新車か中古車のどちらにメリットがあるのか、考えてみましょう。
新車と中古車は、耐用年数が大きく異なります。中古車の方が耐用年数が短くなるので、その分減価償却を早く行うことができます。企業の状況や考え方にもよりますが、早く大きく減価償却を計上したいと考えるのであれば、その点では中古車の方がメリットが大きいと言えます。
ただし社用車を購入する際にそもそも中古車でも問題ないのかは、社内で議論し承認を得ておくといいでしょう。
社用車の購入とリース
次に、社用車を購入するのかリースにするのかという選択肢があります。
購入した場合の減価償却の方法は今まで説明した通りですが、リースの場合には毎月のリース料が経費計上されるので、リース期間中均等に経費が発生します。つまり、減価償却の定額法と同じような結果になるのです。リース契約の期間は通常5年となるので、自動車の価格が5年間で均等で償却されていくような計算です。
定率法を用いて当初に多く経費計上をすることができるのは購入する場合になります。
とはいえ、そもそも金額も使い方も全く異なりますし金額面以外のメリットデメリットもあります。社用車を購入する場合には会計上の負担だけでなく、メンテナンスやその他雑務も自社で担当者をおいて対応しなければいけません。リースであればプランにもよりますが、メンテナンスリースを活用することで、面倒な手続きをアウトソーシングすることができます。
社用車は購入するのがいいのか、リースするのがいいのか。この点については別の記事でより詳しく解説していきたいと思います。