トラック業界の動向 ー「準中型免許」新設と義務化拡大のデジタコ
2017年の3月12日からはトラックの免許が大きく変わり、道路交通法令により準中型免許が新設されました。深刻化するドライバーの高齢化と人手不足の解決に向けて、若い人がトラックドライバーの仕事に従事しやすい環境が作られようとしています。
しかし、運転に慣れていない若手ドライバーに不安はつきもの。そんな時にデジタコはどのようにサポートしてくれるのでしょうか。
デジタコのデータを使用した最新の活用例や施策とともにお届けします。
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目次
安全対策の指針「プラン2009」のさらなる強化
トラック業界の安全対策の指針とされているのが「プラン2009」です。国の「事業用自動車総合安全プラン」の中間見直しと合わせ全国トラック協会でも2014年に中間見直しを行い、「飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無」というを追加しました。この目標を達成するために、営業用トラックを第1当事者とする死亡事故件数について、車両1万台あたり2.0件以下を各都道府県(車籍別)の共通目標数値として死亡事故率の低下を図っています。
重点施策として掲げているのは「安全体質の確立」「コンプライアンスの徹底」「飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無」「IT・新技術の活用」「運行の現場を含めた関係者一体となった行動、構造的な課題への対処」「道路交通環境の整備」、それぞれの強化。このうち、「運行の現場を含めた関係者一体となった行動、構造的な課題への対処」では、モードごとに多発傾向にある特徴的な事故にターゲットを絞り、運転者・運行管理者等運行の現場関係者が一丸となって事故防止に取り組むとともに、運転年数の少ない若年運転者を効果的・効率的に育成・確保することを決定しました。
具体的な施策の一つとしてデジタコの低価格化を推進しつつ、生体センサーやクラウドを活用し健康管理・過労運転防止を含めた安全運転の指導に有効な運行管理・支援システムの確立に向けた検討を進めています。
新設された準中型免許
「プラン2009」の改定後、物流業界が少しずつ変革を起こしています。2015年6月に公布された「道路交通法の一部を改正する法律」によって準中型免許が新設されました。深刻化する人手不足の解決策として新設されたこの免許は、18歳からの取得が可能。
準中型免許は車両総重量が7.5トン、最大積載量が4.5トン、乗車定員10人以下の車両の運転ができます。
道路交通法の一部が改正されたことにより、2007年6月以降に普通免許を取得した方は5トン未満までの車両しか運転ができませんでした。社用トラックで最も多いのは総重量が7〜8トン以上のものだったりします。そのため、若い方がトラックドライバーになるにはまず普通免許を取得し、そこから通算2年以上経過した上で新たに中型免許の取得をしなくてはなりません。さらに、中型免許を取得するには10万円前後の費用がかかります。この金額は若者からすれば決して安くはないもの。このような状況から、人手不足にもかかわらず若者がトラックドライバーになるには大きなハードルがありました。これではなかなか人手不足を補うことができません。
そこで新制度は以下のように変わり、普通免許からではなく初めから準中型免許の取得が可能になりました。
この改定により、高卒新卒者をはじめとした若年層のドライバーの雇用促進が期待されています。
しかし、中には0から免許を取得する方もいるため、人手不足は解消されるかもしれませんが必ずしも事故が減るとは言えません。この準中型免許導入に伴い、デジタコ装着の義務化も4月より大幅に拡大しています。
デジタコであればリアルタイムの運行情報がわかりますし、アラートを出したり直接的なドライバーへの指示も可能です。そのため、事業者にとっても若手の新ドライバーにとっても、安心・安全に業務を遂行できます。デジタコは両者の安全と信頼をつなぐために、大きく貢献してくれるのではないでしょうか。
事故を軽減するための施策
以前、『デジタコやアナタコって何?』という記事内でもご説明しましたが、デジタコは法定三要素である速度・時間・距離のデータ取得ともにドライバーの労務管理や運行管理など多く情報を見える化し、管理者及びドライバーに伝えるもの。デジタコ装着についてはもともと国土交通省自動車局が事故防止対策支援事業の一つとして導入を進めたという経緯があります。
2016年、高速ツアーバス事業を展開しているウィラー・エクスプレス・ジャパンは、同社が東名自動車道で発生したバス事故のイメージを払拭すべく、今後の事故防止対策として総額1億円を投じて富士通の眠気感知センサーと同機器に連動したデジタコを導入しました。急ブレーキや急加速などの危険挙動をデジタコが事前に検知すると共に、ドライバー自身が気づかない眠気をセンサーが検知し、それが発生した際に管理者が休憩指示を出せるそう。眠気を検知した位置情報もデータとして収集されます。
ドライバーの眠気検知デバイスとドラレコを搭載したデジタコの両方を使用することで、社用車とドライバーの管理を徹底化し、未然の事故防止や今後のダイヤ改定などにつなげるとしています。
近年、同社以外にも、見通しが悪い深夜帯の高速バスの事故が増えていることもあり、このようにデジタコとデバイスをうまく組み合わせて多くの情報を集め、今後のダイヤ設定やルート更新、休憩ポイントの見直しなどに役立て、事故の防止への改善策を施行し適切な運転指導を行うことが必要とされています。
このような施策を実行することは利用者が安心して利用するためにも、重要なポイントになるのではないでしょうか。
国がすすめるドライバーの高度健康管理
まだまだ解決への道は遠いドライバー不足問題により、高齢者ドライバーの増加や長時間労働など、健康管理に対する懸念点がさらなる課題としてあがっています。
2017年3月29日、国土交通省は「次世代運行管理・支援システム検討会」を開催し、さらなる安全対策への取り組みとして検討を重ねてきた「貸切バス事業者のデジタコ導入ガイド」を策定。また、事業用車両のドライバーに対する指導監督の充実と高度な健康管理の実現へ向け、次世代運行管理・支援システムの普及と義務化ロードマップ策定と今後の運行管理機器の要件を検討するため、5月にワーキンググループ(WG)を立ち上げ、検討の開始を決めました。
このWGには自動車メーカーをはじめ、装置メーカー、トラックやバスタクシー各事業者をメンバーとして組成する予定です。2016年から実施している「ビッグデータ活用による事故防止対策推進事業」については実施が継続となり、デジタコなどで収集した運行データによるドライバーの体調予報精度の向上を図るべく、トラックとバスを対象に実証実験を行います。2016年度の実験では、5事業者(トラック3、バス2)の6営業所、238人に調査を実施。データに基づく体調予報とドライバーの主観に基づく5段階の疲れ度合いとの一致が53.4%という結果に。2017年は60%に数値目標を置いています。
デジタコやドラレコの普及、そしてこれらの機器の精度の向上によってドライバーの健康が守られ、さらに安全運転へと近づくことが期待されます。
ドライバーの心と体の健康を守るために
準中型免許新設に合わせて、国土交通省は「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」の一部を改正しました。従来の11項目から12項目に増え、トラックの初任ドライバーについては安全運転実技指導を20時間行うことを義務化するなど、ドライバーへの教育強化を目指しています。
そんな中、「機器やシステムが登場しても、ドライバー本人の意識が変わらなければ安全は定着しない」と滋賀県の事業者社長は述べています。デジタコで細かなデータの取得やアラートを出すことは簡単ではありますが、それを守り、改善への努力を求められるのはドライバー本人なのです。
事故を防ぐためには運転技術はさることながら、運転マナーや教育、そして健康管理の重要性をドライバーに認識させることも大事なことです。日頃から自身の体調管理や体調変化にしっかり向き合っていくこと。デジタコなどでいつもと違う挙動が検知された時、その時の健康状態について振り返り自らも認識すること。それによって、突然の体調不良のため起きてしまう交通事故を未然に防止できるようになるでしょう。
心身のちょっとした変化は目に見えるものではないため、他者からすると健全か否かが判断しづらいものです。ドライバーが自発的に安全運転を心がけ、健康管理にも気を遣い、仕事に対してのモチベーションを低下させないためにも、今後はこのような健康管理も大きな課題になっていくでしょう。
安全運転診断で、高度な安全管理と適切な指示を
弊社が開発・提供しているSmartDrive Fleetでは、デジタコ同等の運転データを取得しており、特に「急加速」「急ブレーキ」だけでなく、「急ハンドル」や車体にどういうGがかかったかを可視化することまで行なっているので、ハンドリングの癖や乗車している人が心地よいと思う運転なのかどうか、今後は蛇行度合いから居眠り運転を検知するなど、かなり細かい運転診断が提供できるようになっています。
また、ドライバーの勤怠管理や日報の自動化、整備時期の管理など、車まわりの人的・車両的管理をクラウド場で一括管理できるようなサービスです。もちろん、デジタコ装着が義務付けられている重量のトラック等にはSmartDrive Fleet単体でサービス提供することはできませんが、デジタコに追加して導入することも考えられますし、そもそも義務化対象となっていないトラックなどには安価で手軽にはじめられるオプションとしてもおすすめできます。