物流車両の幹線道路移動を低コストに可視化する方法とは? ー物流業界の課題を解決するETC2.0を活用した賢い運行管理ー
巣ごもり消費の拡大等でBtoCの物流量は増える一方で、物流業界は長い労働時間やドライバー不足や高齢化、トラック積載効率の低迷などの課題があります。また、2019年度(中小企業は2020年度)から始まった時間外労働の上限規制(年720時間)の適用も2024年度からはトラックドライバーにも適用されます。そのような諸問題を解決するためにも、まずは移動の「見える化」をし、適切な運行管理をする必要があります。
本記事では、すでに多くの既販車に搭載されているETC2.0を活用し、低コストで業務の効率化を推進できる運行管理サービスを紹介いたします。
物流業界の現状
国土交通省の資料によると自動車の貨物輸送は、輸送数では都道府県内で完結する短距離輸送が9割以上を占めています。一方、輸送量では都道府県間、ブロック間の輸送が約7割となっており、都道府県間、ブロック間を接続する高規格の道路、いわゆる幹線道路が貨物車の輸送を支え、物流ネットワークの基盤としての役割を担っています。
また全日本トラック協会の資料によると、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均と比較して、大型トラック運転者で 432 時間(月36 時間)長く、中小型トラッ
ク運転者でも384 時間(月 32 時間)と労働時間の長さが問題となっています。また女性の輸送・機械運転従事者は3.5%と依然として低い割合で推移し、ドライバーの高齢化も課題です。
コロナ禍での物流を取り巻く環境の変化
BtoB 物流は、工場等での生産活動が停滞したことで素材や部品等の需要が減少し、海外からの原材料等の輸入も減少したことで低調な荷動きとなり、運送収入は大幅に減少しました。一方で、BtoC 物流は、巣ごもり消費の拡大等の影響により EC 市場の規模が更に拡大し、2020 年度の宅配便取扱個数は対前年比で概ね10~20%増加しました。2021年6月に閣議決定された物流政策の指針となる「総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)」では「コロナ禍を通じ、安定的なサプライチェーンを維持することが、人々の安全・安心な生活や企業の事業活動の継続に直結することが誰の目にも明白な事実となり、それを担う物流の存在感は国内外で飛躍的に高まったと言える。こうした状況においては、物流を取り扱う全ての企業にとって、サプライチェーンの強靱化、物流の効率化が極めて重要な経営課題となり、物流の機能を最大限に発揮できる能力が、企業の競争力を左右する時代が急速に到来していると考えらる」と物流の重要性の高まりと物流の効率化について言及しています。
【参考資料】
- 高速道路を活用した物流の現状(国土交通省)
- 総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)
- 日本のトラック輸送産業 現状と課題2021(全日本トラック協会)
まずは移動の「見える化」をする
様々な諸問題の解決や物流の効率化を実現するためには、さまざなまレイヤーでの施策を講じる必要があります。例えば、ドローンを用いて離島や山間部、過疎地域における荷物配送や災害時の物資輸送の実証実験が進んでいます。自動運転については、高速道路でのトラック隊列走行技術の実証実験を実施しており、2021 年2月には新東名高速道路の一部区間でトラックの後続車無人隊列走行技術を実現しました。そのほか、AI や IoT 等の新技術を活用して一層の物流生産性の向上を図る動きも活発になりつつあります。物流拠点においても無人搬送車(AGV)や自動倉庫等の導入が積極的に進められています。
そんな中で、物流の根幹を担う「移動の見える化」をすることが、諸問題を解決するための第一歩となります。車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用トラックには自動車の走行時間や走行速度などの運行記録を自動的に記録し、メモリーカード等に保存するシステム「デジタコ(アナタコ)」の設置が義務化されていますが、2トン車(車両総重量5t未満、最大積載量2.0~2.9トン)や、事業用車として登録されていない白ナンバーの貨物車はデジタコの装着義務がありません。業務効率化のために各種運行管理サービスも広がってきていますが、新たな専用のデバイスが必要となることも多く、運行管理コストが高くなるといった課題があります。そこで、スマートドライブとパナソニックは、物流車両を利用する企業向けにETC2.0 車載器を搭載した車両であれば利用可能な運行管理サービスの実現に向けた共同実証を 2021 年 6 月から開始し、9月には ETC2.0 システムを活用した運行管理サービスである「ETC2.0 Fleet サービス」を始めました。
ETC2.0を活用した運行管理サービス
ETC2.0 システムは、料金収受に特化した従来の ETC を進化させたシステムで、2015年から導入が始まりました。車載器が持っている特有の情報が全国の高速道路等に設置された ITS スポット(路側機)を経由して収集されます。具体的には200m間隔で取れるGPSデータや急ブレーキ情報などのイベント情報が主に収集され、それを元にリアルタイムでGoogleマップ上に車の位置情報を表示したり、走行軌跡という形で走行ルートが可視化できるといったサービス活用が可能になります。国土交通省によると2021年4月時点でETC2.0車載器の普及台数は約639万台、路側機は高速道路で約1,800箇所、直轄国道では約2,300箇所に上り、普及が加速しています。GPSデータや走行データを取得するためには専用デバイスが必要でしたが、ETC2.0であれば、余計なコストを払わずに現在取り付けている車載器を運行管理にも活用することができます。
運行管理サービスで何ができるのか?変わるのか?
移動の「見える化」は手段であり、ゴールではありません。同サービスを活用することで、何ができるのか?変わるのかを紹介します。まず複数ドライバーの走行ルートが把握できるようになるため、配車の最適化などドライバーの業務効率化を図ることができます。さらに運行管理業務をデジタル化することで、保有車両の台数や形態が適切かを見極めることが容易になり、保有車両台数の見直しなどコスト削減も期待できます。同サービスは、運転日報の作成を補助する機能も備わっており、日報のデジタル化だけでなく、日報記入の抜け漏れを防ぐといったメリットがあります。そのため業務全体の効率化や企業全体の働き方改革の推進に繋げられます。