白ナンバーのアルコールチェックには携帯型の検知器をおススメする理由
道路交通法施行規則の一部改正により、アルコールチェック義務化対象となる企業の経営者や安全運転管理者は、忙しい業務の合間を縫って、その準備に追われているのではないでしょうか。そんな中、ドライバーが遠隔地にいても確実かつ精度の高いアルコールチェックが実現できる「携帯型アルコール検知器(モバイル型アルコールチェッカー)」が注目されています。警察庁が発表したパブリックコメントにおいても、直行直帰・遠隔地での業務等の場合は、「携帯型」の検知器の携行が推奨されています。
この記事では、飲酒事故の撲滅だけではない、クルマに関わる業務の「DX化」にも繋がる携帯型アルコール検知器ならではのメリットについて、詳しく解説します。
目次
まずは「道路交通法施行規則の改正」の内容をおさらい
以前より乗用車5台以上または乗車定員が11人以上の自動車を1台使用する事業所は、次の業務を行う「安全運転管理者」を選任する必要がありました。
- 運転者の状況把握
- 安全運転確保のための運行計画の作成
- 長距離、夜間運転時の交替要員の配置
- 異常気象時の安全確保の措置
- 点呼等による安全運転の指示
- 運転日誌の記録
- 運転者に対する指導
この安全運転管理者の業務と各事業者の自覚によって安全運転意識は保たれてきましたが、2021年6月に飲酒運転の白ナンバーのトラックが児童5人を死傷させる事件が発生。この事件を受け、2021年11月には「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布され、2022年10月からは検知器を使用した「アルコールチェックの実施」が上記の業務に追加されます。
さらに、それに先立って2022年4月からは、運転業務に携わるドライバーの目視による飲酒状況確認と、確認結果の記録・保存(1年間)が追加されました。ちなみに、事業所が飲酒運転を下命または容認していた場合は即時14日間の事業停止、飲酒運転などをともなう重大事故にかかわる指導監督義務違反の場合は即時7日間、飲酒運転などにかかわる指導監督義務違反だと即時3日間の事業停止が課せられます。
また、それにもまして飲酒運転を見逃してしまった企業が負う社会的・道義的責任は重大で、取引先や消費者からの信用が著しく低下することはもちろん、場合によっては事業そのものが立ちいかなくなる可能性も大いにあります。
業種によって異なるアルコールチェックの立ち位置
前項で述べた通り、この度の法改正によって安全運転管理者の為すべき業務と負担は大きくなりますが、それはあくまで「白ナンバー」自動車を運用している事業者に限っての話です。運輸・運送業などの「緑ナンバー事業者」は2011年5月からすでに実施されているため、通常業務の一環になっています。
しかし、なぜ10年間もの長きにわたり、緑ナンバー事業者には義務化されていたアルコールチェックが、白ナンバー業者には義務化されていなかったのでしょうか。それには業種によって異なる、アルコールチェックの立ち位置の違いが大きく影響しているためです。
「移動が商材」である緑ナンバー事業者の場合
移動距離、もしくは運んでいる物の量がそのまま売上(利益)に直結する緑ナンバー事業者の場合、アルコールチェックが義務化された2011年5月以前も、乗務前後にドライバーと車両状況を確認する「点呼」が義務化されていました。
つまり、今まで当たり前に行ってきた点呼業務とアルコールチェックを並行して行うことができるため、管理者の目の前で検査を行う据置型アルコールチェッカーの方が、正確かつ効率的で管理もしやすいとされてきたのです。また、移動で利益を得ている緑ナンバー事業者にとって、アルコールチェックの徹底及び記録は、ビジネスの継続に直結する事項であるため、不正防止という観点からも、高機能な据置型、もしくはIT点呼に対応した高機能な通信型が重宝されているという背景があります。
「移動が手段」である白ナンバー事業者の場合
一方白ナンバー事業者は、移動距離や物量が必ずしも売り上げに直結するものではなく、あくまで移動手段としての車両利用となります。そうした背景から、アルコールチェックの重要性は変わらないものの、白ナンバーへの対象拡大は見送られてきたとも考えられます。
しかし、痛ましい事件を発端として義務化が決まったからには、日常業務に支障が出ない範囲で、アルコールチェックとその結果を記録・保存する体制を構築し、今まで通り利益を追求していく必要があります。
ただし、業種によっては直行直帰やリモートワーク、プライベート性が強いマイカーの流用なども多いため、管理者の目の前で検査を行う据置型では対応しきれなかったり、安価な携帯型検知器のみの運用ではなりすましが発生する等、不正が行われる可能性も。
つまり、白ナンバー事業者が運用体制を整えながら法改正に対応するためには、コストパフォーマンス・導入の手軽さ・法令遵守のすべてにおいて、高い次元でバランスの取れたアルコールチェッカーを選ぶ必要があるという訳です。
白ナンバー業者に「携帯型アルコール検知器」が最適である理由
それぞれの立ち位置の違いに触れたところで、この項では白ナンバー事業者がアルコールチェックの義務化を進める上で、なぜ「携帯型(モバイル型)」に注目しているのか、その理由を解説します。
導入コストが安価
多くの事業者にとって飲酒点検が「企業として最低限実施すべき義務」の1つになるわけですが、やはり気になるのが導入コスト。
携帯型アルコール検知器の端末は、何より小型かつ軽量で持ち運びが簡単なことが最大のメリットです。現在法人向けに販売されている携帯型アルコール検知器の多くは、スマホアプリや専用ソフトと連動していますが、機能をシンプルにすることで価格を抑えています。また、検査端末とデータ管理用のアプリ・ソフトがセットになっていることで、導入から記録保存まで一括して行うことができ、運用開始までにかかる導入時の人的コストも抑えることができます。
「withコロナ」に適合している
緑ナンバー事業者の多くが現在導入している据置型は、不特定多数が出入りする事務所の中で、「呼気の吹きかけ」によって判定を行うため、コロナウィルスのまん延が危惧されている現在においては、やや懸念されるところも。
その点、携帯型アルコール検知器の検査端末は持ち運び可能なため、「密」状態を避け、場所や時間を問わずいつでもどこでも検査を実施することが可能なため、直行直帰やリモートワークなどの新たな勤務形態にもマッチしていると言えるでしょう。
管理業務を効率化できる
携帯型アルコール検知器の多くは、専用アプリや手持ちのPCを通してデータを送信することで、管理者は遠隔地でも検査データをPCで管理でき、たとえ検査対象が多くても、部署・部門ごとに容易に分類管理することが可能です。管理を効率化できる携帯型アルコール検知器のメリットは、法改正への対応という目的以上に大きな効果をもたらすでしょう。
課題は、なりすましによる不正をどう防ぐか
一方で、現在広く普及している携帯型アルコール検知器(モバイル型アルコールチェッカー)は安価で手軽ではあるものの、管理者の目が行き届かない場所で検査するケースも多いため、なりすましなどの不正行為が行われてしまう危険性もゼロではありません。事実、2019年3月には、某航空会社の飛行機整備士がアルコール検査から逃れるため同僚になりすましを依頼、検査をすり抜けて勤務を続けたという不正行為が発覚し、社会問題となりました。
そうした不正を防止するという意味でも、2022年3月時点の警察庁のパブリックコメントでは「カメラ・モニター」等の利用による確認を推奨しています。
また、現在示されている見解では、早朝や夜間であっても電話等による確認が必要となっています。(参考:岡山県警察HP)
しかし、この点は実務上の影響が大きいことから、今後、何らかの形で運用に関する見解が示される可能性も考えられます。
まとめ ~飲酒検査の義務化を「負担」と考えず「変革の好機」と捉えよう~
アルコールチェック義務化の対象が拡大されたのは、飲酒事故を起こさない・起こさせないことが目的です。適切な検査を怠り、万が一、飲酒事故を起こしてしまった場合、企業には非常に厳しい法的・社会的制裁が科せられます。
法改正に対応するためには、人員・時間・お金といったコストを費やして、検査装置の配備や記録・保存の体制を整備する必要があるため、白ナンバー事業者にとっては大きな負担になるかもしれません。しかし、アルコールチェック義務化を負担の増加ではなく、DX化を進めていくうえでの「変革の好機」と捉えることで、費やした資源に見合う、いやそれ以上の効果を得ることも可能です。
目視と声掛けを含めたアルコールチェックを毎日欠かさず実施していれば、従業員の健康状態を細かく判断できます。これを経営的な視点で見ると戦略的に実践する「健康経営」を推し進めることもできるでしょう。
また、クラウド型車両管理システム「SmartDrive Fleet」では、現在携帯型アルコール検知器との連携を進めています。車両管理システムとの連携によって、企業は車両管理、安全運転管理といったコンプライアンス体制強化を進められるのと同時に、従業員の動態や社用車の利用実態を紐付け、人員や車両の効率的な配置・運用などに役立てることも可能になります。
リスクマネジメントに備えつつ、健康経営を実現するために、アルコールチェッカーを活用していきましょう。