NASVA 運転者適性診断とは?適性診断の内容と受講のコツ
トラック、バス、タクシーなどの自動車運送事業者で勤務するドライバーは受講必須となっているのが、NASVA独立行政法人自動車事故対策機構の適性診断です。トラック、バス、タクシーなどの自動車運送事業者に初めて所属した、または転職により違う会社に入社したなど、新たに所属・入社した場合は必ず受けなくてはならず、以降も3年に1度の一般診断の受講が勧められています。もちろん、事業所側も受講を徹底させなくてはなりません。
今回は、初任診断と一般診断に加え、カウンセリング付定期診断や特別診断、65歳以上の運転者を対象とした適齢診断、さらに診断の具体的な内容と受講のコツについて詳しく解説します。
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目次
NASVA独立行政法人自動車事故対策機構とは
人と車の共存を理念に掲げ、自動車事故の発生防止とその被害者援護のための業務を行っているのが独立行政法人のNASVAです。NASVAとは、独立行政法人自動車事故対策機構を英語で表記すると、National Agency for Automotive Safety & Victims' Aidの頭文字をとった略称です。
自動車による交通事故防止のために、運行管理者等指導講習や運転者適性診断による運転の特性を診断し安全運転に役立つきめ細かなアドバイスを行ったり、自動車事故による被害者の方の援護を目的に、育成資金の無利子貸付や友の会の運営・家庭相談による交通遺児等への援護活動も行ったりもしています。
この記事で説明するNASVAの運転診断は、運転に関する長所・短所、運転のクセを様々な測定により明らかにし、診断結果にもとづいた適切なアドバイスを提供することで、交通事故防止に役立てるというもの。決して運転に向いている・向いていない、うまい、下手を見極めるものではなく、運転に関する短所に気づき、改善することで事故防止につなげるのが最大の狙いです。
適性診断の内容と受講方法
適性診断はすべて事前予約が必要です。予約された開始時間に遅れると受講できなくなる場合がありますのでご注意ください。
・適性診断予約システムによる申込み
インターネットから適性診断の予約が可能です。ただし、IDとパスワードによるログインが必要となるため、初回利用時は最寄りの自動車事故対策機構の各支所への申込みをしてください。
・電話等による申込み
最寄りの自動車事故対策機構の各支所へ電話での申込みが可能です。
初任診断
受診対象者:所属する運送事業者において、新たに運転者として採用される方
診断時間と費用:診断時間約1時間40分 / 4,700円
受診時期(旅客):所属する事業者において、事業用自動車の運転者として選任する前
受診時期(貨物):所属する貨物自動車運送事業者において、初めてトラックに乗務する前
一般診断とほぼ同じ内容です。診断結果をベースに、事業用自動車の運転者としての自覚と事故の未然防止のための注意点について指導と助言を受けます。トラックの別会社に転職した場合も初任診断の対象です。
一般診断
受診対象者:普通免許以上を保有している方は誰でも受診することができます。
診断時間と費用:約1時間20分 / 2,300円
受診時期:3年以内に1度の受診が勧められています。
診断内容:ドライバーの性格、運転態度、認知・処理機能、視覚機能などについて、心理や生理の面から運転の特性を把握、安全運転に役立つアドバイスを記した適性診断票を発行します。年齢や生活環境の変化により、運転に対する考え方や反応は変化します。安全運転を続けるために、定期的に受診し、自分の運転特性の変化に気づきましょう。
カウンセリング付一般診断
受診対象者:普通免許以上を保有している方は誰でも受診することができます
診断時間と費用:約1時間40分 / 4,700円
受診時期:3年以内に1度の受診をお勧めします
カウンセラーが、診断結果にもとづいて事故を未然に防ぐための運転行動や、安全運転のために注意すべき点について指導・助言を行うものです。一般診断終了後のカウンセリングのため少々時間がかかります。
特別診断
受診対象者:普通免許以上を保有している方は誰でも受診することができます
診断時間と費用:約3時間 / 10,100円
受診時期:要望に応じて受診可能
カウンセラーまたは大学教授等の適性診断専門委員が一般診断を受診した方の運転経歴等を参考に、さらに精密に運転特性を明らかにする診断です。カウンセリング付一般診断より、さらに深いインサイトが得られます。
適齢診断
受診対象者:所属する運送事業者において、65歳以上の運転者
診断時間と費用:約1時間40分 / 4,700円
受診時期(旅客):65歳になった日から1年以内に1回、75歳になるまで3年以内毎に1回、75歳になった日以降1年以内に1回、その後1年以内毎に1回(毎年1回)
なお、個人タクシー事業者は、事業許可に付された期間の更新日が65歳以上のタイミングになる場合、更新申請前に受診
受診時期(貨物):65歳になった日から1年以内に1回、その後3年以内毎に1回
一般診断とほぼ同じ内容の診断を受けます。加齢による身体機能の変化が運転に与える影響を十分に認識してもらうことで、事故の未然防止を啓蒙。身体機能の変化に応じた運転について、指導と助言を受けることになります。とくに人の命を運ぶ旅客の運転者の適齢診断は、貨物より厳しく診断されています。
特定診断Ⅰ
受診対象者:①死亡事故又は重傷事故を起こし、かつ当該事故前の1年間に事故を起こしたことがない者 ②軽傷事故を起こし、かつ、当該事故前の3年間に事故を起こしたことがある者
診断時間と費用:約2時間 / 9,100円
受診時期:当該事故を起こした後、再び事業用自動車に乗務する前
カウンセラーが交通事故を引き起こした状況について聞き取りを行い、運転経歴等を参考に交通事故の再発防止に必要な運転について指導・助言します。
特定診断Ⅱ
受診対象者:死亡事故又は重傷事故を起こし、かつ当該事故前の1年間に事故を起こしたことがある者
診断時間と費用:約5時間 / 29,300円
受診時期:当該事故を起こした後、再び事業用自動車に乗務する前
カウンセラーが、運転者の運転に関わる諸特性を明らかにするとともに、事故を引き起こすきっかけとなった運転特性と背景となった要因を分析。事故の再発防止に必要な運転行動等について指導と助言を行います。
適性診断を受けなかったら…
貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条の2および、旅客自動車運送事業運輸規則第38条の2にもとづき、罰則があるのは以下の診断を受講しなかった時のみです。そのため、適性診断が必須とされるのは、貨物自動車運送事業輸送安全規則第12条の4及び、旅客自動車運送事業運輸規則第41条の4に定められている以下の診断が該当します。
・死者または負傷者を生じた事故を起こした者→特定診断Ⅰ、Ⅱ
・運転者として新たに雇い入れた者→初任診断
・高齢者に関する診断→適齢診断
違反した場合は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第12条の8及び、旅客自動車運送事業運輸規則第41条の8に定められている「その適性診断の実施者に対し、同条の規定による適性診断に関わる業務を行うべきこと又は適性診断の実施の方法その他の業務の方法の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる」が適用され、改善命令が出されます。
なお、適性診断を受けた者が、重大事故等により罰金以上の刑に処せられ、その執行が終わり、又は、その執行を受けることが無くなった日から2年を経過していない場合には、貨物自動車運送事業輸送安全規則第12条の9及び、旅客自動車運送事業運輸規則第41条の9により、国土交通大臣が、認定を取消したり、期間を定めて適性診断に関わる業務の全部もしくは一部の停止を命じることができるとされています。
重大事故を起こした運転者がその事実を隠して転職することを防ぐため、自動車運送事業者は、新たに採用する者に対して、過去5年分の運転記録証明書を提出するようにしています。これは、あらかじめ過去の事故の有無がわかることで、業務停止命令のリスクを軽減するためです。一般診断には罰則の規定はありませんが、計画的に実施することでドライバーの安全意識向上と事故防止に役立てましょう。
パソコンで行う適性診断の流れとその詳細
NASVAの適性診断はパソコンによって実施されます。ここでは各種測定の順番と測定の内容について、また操作上の注意点やコツについて紹介します。
動作の正確さ
次々と起こる事態に対して、的確かつ迅速な処置が出来るかどうかを測定します。
右手が青色、左手が黄色、右足が赤色に対応し、それぞれボタンを押し続けた状態で診断はスタート。画面に表示された色により、その対応する色の手足を一瞬離してすぐにボタンを押し続けるという内容になっています。
後半の診断では、画面に色が表示されると同時に「ブー」とブザーが鳴ったら離してはいけません。音が鳴らなかったらそれぞれの対応する色の手足を一瞬離してすぐボタンを押し続けます。また、青、黄、赤がそれぞれブザーの鳴った時も含めて何回出現したかも記憶して答え無ければなりません。状況に応じて正確に操作できるかどうかを診断します。同じことを何度か繰り返します。
色のカウントは常に001、101など青黄赤の順にカウントしておくと最後に426と仮になったら青4、黄2、赤6と楽に答えることが可能です。メモをとることなどできませんのでしっかり記憶しておきましょう。
判断動作のタイミング
動作を行うタイミングの判断の適切さを測定します。
画面の右から左に車が移動し、左端に来たと判断した時にボタンを押す診断です。車の移動距離の左半分のトンネルのように隠されており、右半分を通過する速度でトンネル内を走行すると抜け出るのはいつになるのかを判断します。トンネルから抜け出たタイミングでボタンを押すと左端に車が表示されますが、いつまでもボタンを押さないと車は表示されません。
何度か検査は繰り返されますが、その都度速度は変動します。漠然と見ているだけならタイミングはバラバラな結果になりますので、「いち、に、さん、よん」とトンネル内でも同じカウントでボタンを押すとほぼ正確に押すことができるでしょう。速度が速い時も遅い時も同じタイミングでカウントして「さん」か「よん」で押すか判断するのがポイントです。
注意の配分
次々に変化する事態に対する注意の配分の具合を測定します。
左の画面が下に進むように、右の画面が上に進むように流れます。画面の左右両方に△のマークがありますので、ハンドルを左右に動かして△の先端が障害物の緑側を通るようにハンドルを操作してください。緑と反対の赤側を▽△の先端が通過すると間違いと診断され「ブー」とブザーが鳴ります。
両側の障害物の△までの距離と正確なハンドル操作が問われますので、両側の画面をバランスよく確認しながら正確に操作しましょう。
視覚機能
動体視力、眼球運動、周辺視野等を測定します。
3つの数字が瞬時に流れますので、流れた順に数字を入力してください。速度を変えながら何度か流れますが、パソコン画面を見ていると速くて数字を読み取るのも大変です。筆者の視力は両眼1.2以上です
で、視力の弱い方にはハードな検査かもしれません。
眼球運動は、上段、中断、下段それぞれ3つの合計9つの場所に一か所ずつ□か○の表示がランダムに点灯して消えます。○の場所を答えなくてはなりませんが、○が2か所だったり3か所だったりその都度変化しますので、瞬時に○の場所を記憶しましょう。
周辺視野は、中心に数字が、8方向中2方向に○が「バン!」という音と共に一瞬で表示されます。表示された数字と○の方向を答えなくてはなりませんが、この時のポイントは画面全体を遠目で見ることです。65歳以上の適齢診断では、これらに加えて。暗い画面から視力検査の記号が表示され答えるという夜間診断も実施されます。
安全態度/危険感受性
ドライバーの安全運転に対する考え方と危険予測・判断の妥当性を測定します。
CGの運転シミュレーションによる模範運転データで測定、または問診方式の診断、どちらの方法か選びます。CGによる運転シミュレーションは意図しないふらつきなど正確に診断できない可能性が高く、NASVAでも実際の診断は問診方式での診断を推奨しています。
すべての検査が終了したら、検査結果が表示されます。前回も検査を受けている方の場合、前回の結果との比較、同年代の平均値との比較がグラフで表示され、改善された点、不足した点が解説されます。表示された結果を確認した後は、一般診断以外は各診断に応じたカウンセリングを受けることになります。最後に、今回の診断結果がプリントアウトされた用紙が封筒に入れられて渡されますので、検査結果は会社の担当者に渡しましょう。
結果と改善点をしっかりと受け止め、今後の運転で気を付けるポイントを明確にして事故防止につなげてください。
まずは毎日の運転状況を見える化して安全運転を徹底しよう
適性診断の受講は初回こそ必須とされていますが、以降は必須とはされていません。しかし、時間が経つとともに安全運転への意識が薄れてきたり、身体の変化は起こったりします。安全運転と無事故無違反を徹底したいならば、安全運転管理者が日頃からドライバーの運転状況や体調を把握し、適切な指導を行わなくてはなりません。
そこで毎日における高度な安全運転診断を可能にしたのが、スマートドライブの提供するSmartDrive Fleetです。取り付け工事は不要、月々2,480円〜から利用できるという手軽さがポイント。
自動車運送事業者にとって、一番大事なことはどんな事故も0に近づけること。SmartDrive Fleetでは非常に高精度な安全運転診断機能を備えているため、個々のドライバーの運転の癖をしっかり突き止めます。危険な運転を察知したら管理者に通知で知らせることもできますし、運転のクセや苦手箇所を明確することで、適切な安全運転指導を実施することができます。一つひとつ危険運転の原因を潰していくことで、事故を大幅に減らすことができますし、お互いに安心かつ快適に業務を進めることができるでしょう。
事故防止や安全意識を向上させるには、毎日の積み重ねと習慣化が大事です。こうしたツールを利用する最大のメリットは、ドライバーが自分自身の運転を毎日確認できること。徐々に運転の癖がなおり、安定した走行ができるようになったらしっかり評価をするなどして、ドライバーのモチベーションを保ってあげましょう。