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車の整備代のほとんどが技術料ってホント?〜元整備士が教える車の知恵その4〜

みなさん、お車を大切にされていますか? お車を大切にすればするほど定期的にかかるメンテナンスコストはけっして安くないものです。オイル交換、タイヤ交換、ワイパー、一年点検、車検、etc....

みなさんはこれらの整備にかかる費用のほとんどが、実際は部品代ではなく技術料であるという事をご存じでしょうか? 車検に出すたびに『高い金額を請求されるけど、これって本当にこんなにかかるの?』と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、今回はそんな疑問に対してお応えしていきたいと思います。

車の整備代のほとんどが技術料ってホント?〜元整備士が教える車の知恵その4〜

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部品代は実はそんなに高くない?

例えばクーラーベルト、ファンベルトのような2〜4年ごとに交換するようなベルト(全てを一本で繋げるタイプではなく、個別になっているタイプのベルト)の部品の一本あたりのお値段は、1500円〜2500円程度とさほど高くありません。

しかしベルト交換は手間のかかるものも多く、リフトで上げないと交換が困難なものや、工具が入らない狭い隙間に作業箇所があるため、フロントバンパーを取り外さないと作業できないものなどがあり、どうしても時間がかかってしまいます。

そのため、交換を行うための作業工賃は、1本あたり3000円〜4000円程度かかってしまう事が多いです。

他にもオイル交換などは、グレードを気にしなければ安いオイルはおおよそ1Lあたり1000円前後、軽自動車はこれを3L入れますから3000円ほど。しかしスタンドなどで交換をお願いすると請求される金額は5000円前後になります。

つまり、技術料などで全体の金額の3分の1程度を請求されている計算になるわけです。
(オイル交換に関して言えば、オイルの廃棄にかかる値段もあります。整備工場などではこれを回収業者に無料で引き取ってもらっていたりしますが、お金を払って引き取ってもらっている場所もあります)

実際にどれぐらいが技術料になるの?

基本的にディーラーや整備工場に修理、交換などの作業を頼むと、レバレートといわれる一時間あたりの規定工賃を元に作業工賃が決定されます。このレバレートはあくまでもそのディーラー、整備工場ごとに設定された金額のため、それぞれの会社によって多少設定金額が上下します。

整備士として私が働いていた工場は平均的な値段設定となっており、一時間あたりの工賃は8000円という設定でしたが、安く設定している工場では6000円程度のレバレート、高い工場では10000円程度を設定している所もありました。

このレバレートに、実際の作業でどれぐらいの時間がかかるのか、といった『作業点数』を掛ける事によって作業工賃が決まります。

つまり、技術料の計算式は、レバレート(一時間あたりの工賃)× 作業ごとにかかる時間での掛け数(作業点数)= その作業に対する工賃  となるわけです。

この作業ごとにかかる時間に関しては、おおよそ決められており、日本自動車整備振興会より発行されている『自動車整備標準作業点数表』にその作業にかかる平均的な時間が車種別などで記載されております。一般の整備工場などはこの作業点数表を元に作業にかかる時間を割り出し、お客様に見積もりを出しているのです。

一般の方がその工場の工賃、作業に対する請求が適正なのかを確認したい場合、『自動車整備標準作業点数表』をご自分で購入し、修理を依頼する工場へ、その工場のレバレートがいくらなのかを確認する事によって計算する事ができます。

何故、技術料はこんなに高いのか?

一般のお客様からよく出てくる質問・ご相談ですが、「時給8000円とか高すぎないか?」とか、「もっと安くしてほしい」とか、なかには「会社を通さず君に個人的に頼むから、時間をかけていいから休日に安くやってくれない?」なんてお客様もいたりします。

最後のお客様はさすがに論外なのですが、車の整備を行う上での技術料が高いのには以下のような理由があります。

・技術料がそのまま会社としての儲けであり、これによって会社の設備費用、事務員や整備士の給料などをまかなっている。

自動車の整備工場などは、問屋やいわゆる小売店などと違い沢山の部品を販売しているわけではありません。ですので、どこで利益を出すのかというと、ほぼ作業工賃のみで利益を出さなければならない計算になります。

会社の設備費用というのは、実は他の業種と比べ非常に高いものになっており、新しい自動車の整備工場を作るためにかかる初期費用は1000万以上かかったりもします。また、これらの設備は「消耗品」であり、みなさんのお車同様に定期的にメンテナンスを行ったり部品交換、またそのものの買い換えなどを行わなければならないため、設備の維持にも非常に高いコストがかかるのです。

これらとは別に、会社で使う諸経費や事務員、整備士のお給料、整備振興会への加入費など、月々たくさんのお金がかかります。そのため、みなさんから見ると一見、非常に高いように思える技術工賃が設定されているのです。

・車の整備という作業の多くはお客様の命にかかわるものであり、非常にリスクが高いため安く行う事ができない。

また、もう一つ大きな理由があります。それは自動車が「みなさんの命を乗せて走るもの」であるということです。

先ほどの設備費用の話にもかかってくる話ですが、みなさんの命を乗せて走る車だからこそ、その設備や作業には一切の妥協が許されません。たとえば、長年使ってだいぶ痛んでしまったレンチを使い続けていたとします。それでオイル交換の際にオイルパンのナットを締めたとして、工具の痛みにより適切に締めることができなかった場合、まず、オイルが漏れ出します。

そのオイル漏れによって徐々にエンジン内のオイルの残量は減っていき、お客様がそれに気付かず、高速道路を走り続けたとしたら……?  もし万が一、オイルが全て漏れ出してしまった状態で高速走行を行った場合、エンジンは焼き切れ、突然車が走行不能になります。そしてお客様があわてて外に出ようとしても、そこは高速道路のど真ん中……。下手に降車しようものなら轢かれてしまいかねません。

工具一つとっても、安い単価で作業を行い、安いんだから仕方ない……と、さまざまな「妥協」のうえで作業を行うとこのような危険性があります。当然、まともな整備工場はこのような事が無いように定期的に工具を買い換えていますし、お客様からいただいた高い技術料の分、完璧な仕事を行っています。

まとめ

自動車の作業にかかる技術料というのは、様々な要因があって高いのであるという事がご理解いただけたかと思います。高い費用を取るからこそ、整備士は「プロ」として完璧な仕事を行います。

逆に高い技術料を取ったくせに「プロらしからぬ」ミスや、『整備してもらったのにすぐに壊れた!』 などといったことがあった場合は、適切に工場へ抗議を行って良いと思います。「大切な命」を乗せて走る自動車の整備に「妥協やミス」は許されないのですから。

整備士達も、そういった覚悟をもって、日々みなさんの車を整備させていただいているのです。

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