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ただの交通から移動のサービスへ。人の移動に革命を起こす注目の「MaaS」を徹底解説

激動のモビリティ業界では、昨今、数多くのバズワードが誕生しています。中でももっとも注目されているのが、MaaSとCASE。とくにMaaSは、その地方の移動における課題を解決するとして、国土交通相も日本版MaaSを推進しているように、移動の未来を変える手段として期待されています。

この記事ではそもそもMaaSとは何かという基本から、2021年における最新事例までをわかりやすく解説します。

ただの交通から移動のサービスへ。人の移動に革命を起こす注目の「MaaS」を徹底解説

MaaSとは

MaaSとは、Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略称で、あらゆるモビリティ(移動)が一つのサービスとして、シームレスにつながることを意味した言葉です。

UITP(国際公共交通連合)によると、MaaSとはさまざまなモビリティサービス(電車やバスなどの公共交通機関、ライドシェアリング、カーシェアリング、サイクルシェアリング、タクシー、レンタカー、ライドヘイリングなど)を統合し、これらにアクセスできるものであり、その前提として、現在もこれからも利用可能な移動手段と効率的な公共交通システムが必要だとされています。そして、このシステムは、利用者の移動ニーズにもとづいて最適な解決策を提案するものでなければなりません。つまり、MaaSは、誰もが・いつでも利用でき、計画から予約、決済、経路情報までを提供し、快適かつスムーズな移動を提供することなのです。

そもそも、MaaSという言葉が誕生したのはフィンランドからで、同国のMaaS Global社のサンポ・ヒーネタン氏が提唱したことで、MaaSのビジネスが創出されるようになりました。2012年には米国カリフォルニア州サンフランシスコで「E-Mobility as a Service」をテーマにした会議が開かれ、デジタルプラットフォームを通じたシームレスなモビリティサービスについて議論され、2015年に開催されたITS(高度道路交通システム)世界会議で設立された「MaaS Alliance」では、MaaSとは、車やバイクをはじめ、バス・鉄道・航空機・船など、あらゆる種類の乗り物を単なる移動手段としてではなく、ニーズに応じて利用できる「1つのサービスへの統合」であると、定義されました。

国土交通省では現在、「大都市近郊型・地方都市型」「地方郊外・過疎地型」「観光地型」の三種にてMaaSの取り組みを進めており、2020年には、地域の課題に資するMaaSモデルの構築を図る「日本版MaaS推進・支援事業として、国内38事業を選定しました。都心、地方、それぞれの地における課題解決を目指しつつ、新たな事業モデルを創出することで、持続可能な移動の実現を目指しているのです。

MaaSにはレベルがある

新しい概念であるMaaSには、提供するサービスの進行状況に応じて、次のように、0〜4の5段階で分類されています。

レベル説明該当するサービス
レベル0統合なし、つまり移動媒体がそれぞれ独自にサービス提供しているレベル。現在の交通システムはここに該当します。タクシー、バス、電車、カーシェア、
レベル1料金・ダイヤ・所要時間・予約状況などといった、移動に関する一定の情報が統合され、アプリやWEBサイトなどによって利用者へ提供されている段階。NAVITIME、Google、経路案内、乗換案内
レベル2目的地までに利用する交通機関を、スマホアプリなどによって一括比較でき、予約・発券・決済をワンストップで可能になる段階。滴滴出行(Didi、中国版のUber)、Smile einhuach mobil
レベル3事業者の連携が進み、どの交通機関を選択しても目的地までの料金が統一されたり、定額乗り放題サービスができたりするプラットフォームなどが、整備される段階。Whim、UbiGO
レベル4事業者レベルを超え、地方自治体や国が都市計画・政策へMaaSの概念を組み込み、連動・協調して推進する最終段階。

MaaSの事例

MaaSについては前項で解説しましたが、国や企業などによって若干、その概念は異なります。

この項では具体的に現在、どのようなサービスが提供されているのか、国内外の事例をいくつかご紹介しましょう。

フィンランド発のMaaSアプリ「Whim」

MaaS先進国であるフィンランドのMaaS Global社が開発したサービスで、公共交通の電車・バス・タクシー・シティバイク(シェアリングサイクル)・レンタカーなど、目的地のルート検索から、複数のモビリティサービスの予約と決済が一括で行うことができます。Whimは、ベルギー、イギリス、オランダ、シンガポールなどでも現地企業と提携し、実証実験を進めたり、サービスの提供を開始したりしています。

公式サイト:https://whimapp.com/

BMWとダイムラーの統合で誕生した「REACH NOW」

2019年、独BMWグループとダイムラーがモビリティサービスの領域で統合し、5つの合弁会社を設立。カーシェア、ライドヘイリング、パーキング、チャージング、マルチモダリティなどの領域でサービスを連携する中で誕生したのが「REACH NOW」。

さまざまな移動手段をつなぐマルチモーダル・オンデマンドモビリティサービスを提供するプラットフォームで、日本国内では前身であるMoovelを利用した実証実験をJR東日本や東京急行電鉄が行っています。

公式サイト:https://www.reach-now.com/de/

ビッグデータで利便性アップ台湾の「UMAJI」

2018年、交通部と台湾の通信最大手企業である中華電信が共同で開発・提供を開始したのが「UMAJI 遊.買.集」アプリ。ビッグデータ解析、スマート交通、モバイル決済などの機能が使える旅行サービスであり、利用者が少ない時間帯はプレゼントなどの特典もあるのだとか。

公式サイト:https://www.metropia.com/umaji

実用化が進んでいる?トヨタの「my route」

2018年からの実証実験を経て、神奈川、富山、福岡、熊本、宮崎の一部エリアでサービスを開始しているトヨタの「my route」。移動をもっと自由にもっと楽しくすることを目的に、ルート検索、チケットの予約と購入、お出かけスポット検索、デジタルチケットなど、多くの便利機能が搭載されています。

公式サイト:https://www.myroute.fun/

観光MaaS、郊外型MaaSの代表格、小田急電鉄の「EMot」

小田急電鉄が構築するオープンデータプラットフォーム「MaaS Japan」を活用してリリースされた「EMot」は、モビリティをシームレスにつなぎ、最適なルートを提案する観光および郊外型のMaaSアプリです。サイト上では用途別にお得なチケットを紹介しており、移動とお出かけが楽しくなる仕組みが満載。

公式サイト:https://www.emot.jp/

大都市型MaaSは東京メトロの「my!東京MaaS」

「my!東京MaaS」は、「パーソナライズド」「リアルタイム」「さらなるネットワークの連続性の追求」という3つのキーワードで展開する、大都市型MaaSアプリ。移動のしやすさ、自分好みの東京を実現するために、タクシー・シェアサイクルを含むパーソナライズされた移動経路・付帯サービス、リアルタイムの運行情報、混雑の見える化など、都市部での移動をスムーズにするサービスです。

公式サイト:https://www.tokyometro.jp/maas/

MasSの理想像とは?現在進められているMasSの事例

2021年現在、国内外ではどのような動きが見られるのでしょうか。調査結果から最新事情までをお伝えします。

調査結果から見えるMasSのあるべき姿

まずは、世界がMasSの現在地を理解するために、キュービックが各国グローバル企業を対象に行ったMaaSとMoD(オンデマンド交通)に関する意識調査「2021年MaaS調査結果」に目を通していきましょう。

キュービックは米国カリフォルニア州に本社を置く、軍事・防衛および公共交通機関システム企業ですが、同社の発表した調査結果によると調査対象となった企業の多くは、MasSこそ主要都市が今抱えている、排気ガスによる環境汚染や慢性的な交通渋滞、公共交通機関の利用者減少やファースト・ラストワンマイル選択肢の欠如などといったモビリティ課題の有効な解決策になると考えているようです。

同時に、MasSを導入・普及するには、運行データや個人情報の保護・保全、サービス統合の法的・技術的課題、システムの開発・運用にかかる膨大なコストといった障壁を鑑みると、MasSサービスを取りまとめレギュレーションを決めるのは、地方自治体及び公共交通機関であるべきだと、約半数(56%)の企業が回答していました。また、「優先すべきMasSサービスは?」という設問に対し、43%が「最初から全てのサービスが展開されるべき」と回答、オンデマンド交通(21%)や自転車・スクーターなどのシェアリングサービス(11%)が、それに続く結果になっています。

ホンダ GMと共同開発した自動運転車でMasS立ち上げ

MasSや自動運転に関しては、やや出遅れ感のあったホンダ自動車ですが、GMクルーズ・GMと締結した資本・業務提携関係に基づき、3社による自動運転技術の技術実証を、2021年9月中に栃木県宇都宮市・芳賀町で実施すると発表しました。その行程は、まず地図作成車両により高精度地図を作成し、GM・Boltをベースとした試験車両「クルーズAV」が安全に走行できるよう事前準備、その後公道走行を通じて、⽇本の交通環境や関連法令などに合わせた自動運転技術が開発・検証される予定です。

調査結果でもわかる通り、「システムの開発・運用にかかる膨大なコスト」がMasS導入・普及に向けた大きなハードルの1つですが、ホンダはGMクルーズ・GMという巨大資本との連携で、自社が描くMasS戦略を一気に推し進めていく考えのようです。

長引くコロナ禍の影響で加速する医療×MasS

我が国において、病院以外で発生している心肺停止は年間78,000件に及び、AEDが必要となる状況の66%が「家庭内」というデータがありますが、コロナ禍の影響で在宅時間が伸びている今、その比率はさらに高まっていると予想されます。そんな中、ヘルスケア製品・医療関連機器を開発・製造・販売しているフィリップス・ジャパンは、同社の家庭用AED 「ハートスタートHS1 Home」を、今年9月から日本市場へ導入すると発表しました。

いわゆる、withコロナ・アフターコロナを見据えた戦略ですが、同社は並行してAEDを始めとする医療機器と医師をモビリティに乗せて運ぶ、「医療MaaS」への取り組みを進めています。

同社が目指しているのは予防医療から自宅でのケアまで、ワンストップで行える「ヘルスケアモビリティ」です。同社は、MasS事業推進のために設立された「MONETコンソーシアム」に参画し、複数の自治体・企業との連携を通じ、交通・小売・物流・食などの様々な分野とヘルスケアを組み合わせた、新しいMasSサービスの構築を目指しています。

MaaSの今後

都市部、地方部、それぞれの移動の課題に関する課題を解決するサービスとしても注目されているMaaS。しかし、基本はスマホアプリで利活用するため、スマホの普及、そして誰でも簡単に利用できることが拡大のポイントになります。また、業界や業種がそれぞれ連携し合い、互いのサービスをシームレスにつなぐことで、ユーザーにとって利便性の高いサービスを実現できるでしょう。

MaaSは今後、一人ひとりが効率よく快適な移動ができるサービスとしてますます普及していくのではないでしょうか。

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