働き方改革を進めるため必要なこと【中編】~働き方改革を車両管理で推進しよう~
働き方改革を推進するにあたり、多くの企業がフレックス制やリモートワークなど「時間・場所」の柔軟性を向上する施策に取り組んでいます。しかし、さまざまな施策を実行しても、前編で触れたようにワークライフバランス(WLB)の向上に繋がっていないのが現状です。フレックスタイム制やリモートワークは、従業員に「働き方選択の余地」を与える有効な手段ですが、実施によって発生するメリットに捉われ過ぎデメリット対策を疎かにすると、単なる「絵に描いた餅」になる可能性があります。
中編では、フレックスタイム制・リモートワークのメリットやデメリットを解説しつつ、デメリット対策として導入すべき「システム」を紹介します。
目次
働き方改革の一つ。個々に併せたフレックスタイム制・リモートワークとは
フレックスタイム制とは、1987年の労働基準法改正に伴い翌年4月から正式導入が始まった、「変動労働時間制」の一種であり、2の範囲内で「働く時間を自由化」する施策を指します。
- コアタイム・・・必ず勤務(出勤)しなくてはならない時間帯
- フレキシブルタイム・・・勤務(出勤)を労働者が自由に選択できる時間帯
一方、リモートワークとはITツールの活用よる自宅・レンタルオフィスなどでの遠隔勤務、あるいは社用車を貸与した従業員に営業・取引先への直行や、勤務後の直帰を許可し「働く場所を自由化」する施策です。また、物流・運送業のドライバーや渉外担当者などは、そもそも事業所に滞在する時間が短く、「勤務時間=車両での移動」とされるケースも多いため、移動範囲がある程度決まっているとはいえ、広義で言えばリモートワークに位置付けて対策を講じるべきでしょう。
フレックスタイム制のメリットとデメリット対策
フレックスタイム制を導入すれば、柔軟な労働時間配分が可能となるため、労使ともに多くのメリットを期待できます。
フレックスタイム制のメリット
- 朝夕の通勤ラッシュを避けることによる通勤・帰宅時間のカット
- 効率的な時間配分による残業の軽減
- 勤務自由度・労務環境向上による優秀な人材獲得・定着
- 夏場の節電対策&残業時間短縮による人件費の節約
しかし、フレックスタイム制は自主性によって成否が大きく左右する施策であるため、自己管理が苦手で時間にルーズな傾向にある従業員へ適用すると、かえって業務効率が悪化する恐れがあります。また、仕事に対する意識が高く自己管理能力の優れた従業員ばかりだったとしても、
- 社内外双方のコミュニケーション能力低下
- 非効率的な配分による労働時間の上昇
- 早朝・深夜勤務の増加による労働環境悪化
- 勤怠管理&労使協定締結プロセスの複雑化
といったデメリットが発生する可能性があり、厚生労働省が2017年に発表した「就労条件総合調査」よれば、フレックスタイム制の導入率は調査対象全体でわずか「7.9%」程度でした。従業員1,000人以上の大企業では「14%」導入されていますが、30~99人の中小事業所の場合は「2.4%」に留まっていますので、そもそも導入自体を検討していない、もしくは実施したが弊害の方が大きく継続を断念するケースがほとんどだと言えるでしょう。
フレックスタイム制を働き方改革の一環として正しく機能させるためには、以下のようなデメリット対策を、すべて網羅しなくてはなりません。
- 労働時間に対する意識向上を目的とした教育・啓もう活動の徹底
- 業務に支障をきたさないコアタイム・フレキシブルタイムの設定
- 勤怠管理システムによる総労働時間の把握と適切な調整
- 制度内容・適用範囲の明確化と細分化
- 就業規則への記載および労使協定の締結
所要時間やコストを考えると、全社的にフレックスタイム制を導入するのは現実的ではありませんし、一部の部署だけを適用範囲にすると他の部署から不満が出る可能性も高いほか、当然ながら法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えれば残業が発生します。
ソフトバンクや味の素など、一部の巨大企業が実施しているコアタイムなしの「スーパー・フレックスタイム制」は中小企業にとってハードルが高く、出・退勤時間(※)を30分~1時間の範囲で自由にする程度の施策の方が取り入れやすいでしょう。
※ただし、出勤・退勤いずれかに限定したフレックスタイム制の導入は、労基法で認められていないため注意が必要です。
リモートワークのメリットとデメリット対策
ITツールが普及・ネット環境も充実してきた現在、参加者がオフィスに集合する時間をカット可能な「Web会議」を実施している企業が大幅に増えました。また、完全在宅労働で生計を立てる「フリーランス」も、年々、増加傾向にあります。
テレワーク(Tele=離れた所・Work=働く)とも呼ばれるリモートワークのメリットは、次のように数多く挙げられます。
- カットした移動時間を業務回すことによる生産性
- 出産後の職場復帰支援の強化&育児・介護を両立した業務継続
- 出勤人員・回数の減少による備品費・光熱費・通勤手当などのコスト節約
- 働く場所の自由化に伴うWLBの改善
- コミュニケーションの見える化によるハラスメント軽減
- 出勤範囲にこだわらない人材募集・獲得
「働く場所の自由化」が主たる目的のリモートワークですが、2016年に行なわれた総務省統計局の調査によると、移動手段をすべて含めた通勤時間の全国平均は「片道約40分」に及ぶのだとか。たとえば、週5日出勤のうち2日を在宅ワークに移行するだけで、「約2,7時間」を業務、もしくは余暇や趣味に充てることができるため、デメリットの多いフレックスタイム制の「進化版」として、企業規模に関わらず導入・運用可能な働き方改革の施策と言えるでしょう。
しかし、業種によってはリモートワーク導入が困難である場合も多く、次の業種に関しては適合が難しくなります。
- 業務による成果物が「現物」である・・・農林水産業、建設業、製造業の生産ラインなど。
- 固定された場所での業務自体が「商品・サービス」である・・・小売業、物流・運送業、飲食業、サービス業全般、教育・介護・医療分野など。
また、どんな業種であっても経理・総務・マーケテイング・企画部門については、一部業務をリモート化することも可能ですが、かえって労働時間超過などの環境悪化や、生産性低下につながりかねないデメリットも存在します。
1. 勤務とプライベートの線引きが困難
2. 成果に対する評価基準が曖昧
3. 生活習慣の乱れによる健康被害発生
4. 自然災害など緊急事態での初期対応が遅れる
5. コミュニケーション欠如によるチームワークの低下
6. プロジェクトの進捗状況が不明瞭
1・2・3に関しては、リモートワーカーごとに異なる労働条件を細かく設定することができるため、「いつ・誰が・どこで・どんな業務」を行っているか、管理者が一目でリアルタイムにチェックできる「クラウド型勤怠管理システム」を導入し、WLB向上を図りましょう。加えて、4は緊急時の指示系統・連絡手段の確立や地域ごとの非難場所を把握すること、5・6は定期的なアナログ会議・会合の開催、WEB会議やメール交換による情報の共有化に努めれば、デメリットを回避することも可能です。
問題は時間によって、勤務場所が変化する物流・運送業者や、営業マンなど渉外部門の勤怠管理が困難なこと。見えないぶん、どのように対応すべきかわからないという管理者は、最適な車両管理システムを選択・活用すれば、労使双方に大きなメリットが発生し同時にデメリットを打破することも可能です。
車両管理システムなら位置情報がわかる
車両管理とは、企業・組織が所有する車両について、
- 車種・ナンバー・保有台数
- 使用を許可している従業員・部署の範囲
- 導入スタイル(購入・リース・レンタカー・シェアリング)
- 車検を始めとするメンテナンス
- 自動車保険加入状況・事故履歴
といった基本情報を把握し、安全かつ適切に運用できるようマネジメントする業務です。
多岐にわたる情報をIT活用で一元化することにより、車両管理業務の効率化できるサービスが車両管理システムであり、以下で示す「3つのメリット」が期待されます。
その1 位置情報・動態把握による適切な勤怠管理・評価体制の確立
現在、多くのIT関連企業が車両管理システムをリリースしており、そのほとんどがGPSによる車両位置情報の取得と、通信デバイスを経由したリアルタイムな動態管理機能、運行日報の自動作成機能を有しています。
社用車がどこに止まっているのか、効率的なルートで運用がなされているのかなど、離れて勤務する従業員の行動監視が可能であるため、正確な勤怠管理の材料として活用することができます。また、エコドライブの徹底や安全運転を日頃から心掛けている従業員に対して企業が正当に評価する姿勢をアピールすれば、ドライバーのモチベーションUPによる生産性向上も期待できるでしょう。
その2 車両管理担当者・部署の工数減少&コスト削減
車両管理者は車両・コスト・ドライバーなど、多岐にわたる関連情報を漏らすことなく整理し、最適かつ安全な車両運用計画を立てなくてはなりません。そのため、保有車両が増えれば増えるほど、業務韓遂までに長い時間と多大な労力を要します。その点、車両管理システムを導入すれば、あらゆる情報を簡単に検索・確認できるため、
- 配車・運行スケジュールの設計
- 期限満了に伴う車検・保険の更新
- 購入車両の減価償却など財務管理
- リース車の契約満了に伴う入替申請
- レンタカー・シェアカーの予約
など、業務工数を大幅に減らすことが可能なことから、担当者・部署の働き方改革をフォローできるのです。また、コスト面で企業に与えるメリットも多く、
- 稼働状況の緻密な把握・・・適切な保有台数の調整による維持コスト削減。
- 運行日報作成の自動化・・・帰社後の作成時間短縮=残業代のカット。
- エコドライブ&安全運転意識の向上・・・燃料代の節約や、事故に伴う車両修理費・補償発生、保険料値上がりなど。
サービスの内容や車両に取り付けるデバイスのタイプによって導入コストはまちまちですが、事業規模にマッチしたシステムをチョイスすれば、十分な費用対効果を期待できるでしょう。
その3 安全運転意識の向上・教育徹底による交通事故の予防
車両管理システムには、スマホなどの通信モバイルと連動することで危険運転(急ブレーキ・急発進・急ハンドル)を検知し、発生した回数や場所をドライバー・管理者が随時確認できる、「安全運転診断機能」を有しているタイプも数多くリリースされています。ドライバーは自分の運転を振り返ることで安全運転への意識を高めることができますし、管理者は入手した危険運転のデータを、個人ごとの運転特性に合わせた安全教育に生かすことで、会社全体の安全運転意識向上と事故防止を図ることができます。
まとめ
フレックスタイムは、企業それぞれの業態・規模に合った適用範囲の設定と、従来の勤怠管理を実施すればある程度の効果を期待できますが、リモートワークはそれが難しいため、「車両管理システム」が威力を発揮します。後編では、多くの企業が実際に導入して働き方改革を推進している車両管理システムの紹介と具体的な運用方法について、詳しく解説しましょう。